「惨め」とユキは首を振りながら言った。 「実に」と僕は言った。
僕が「それはよかった」という台詞を使うのは、他にも何ひとつとして肯定的言語表現を思いつけず、しかも沈黙が不適切であるという危機的状況に限られている。
「これはむずかしいぜ、ワトソン君」と僕はテーブルの上の灰皿に向かって言った。もちろん灰皿は何も答えなかった。灰皿は頭がいいからこういうことには一切関わり合いにならないようにしているのだ」