右目は回復しない
おそらく使いすぎているし疲れすぎているし
部屋が乾燥しているのだろう
次の日
目が覚めるとその1時間くらいは問題がない
ただしとても眠い
目がなかなか開かない
また窓の外を見る
コンクリートジャングル、僕はこれを求めていた
ふと視界にまた違和感を感じる。
空が二つに切り取られている
開かない目で僕は二つに切り取られた空を見る
出かけるまで時間がない
素早くCCDで記録する
再生紙のメモ帳に書き込む
空、半分、5/18、8:10
手早く着替えて
うがいをし、顔を洗い再起動をかける
僕自身に。
なかなか起動しない
僕自身が。
同時進行で温めたスープが吹きこぼれそうになる
ゆっくりとスープを飲み干し、
部屋を一通り掃除する
気がつくと空は元通りになっている
あいつらがたぶん元に戻した
僕はそれをまたCCDに記録する
空、半分、5/18、8:45
気づいたのはおそらく僕だけだ
もう時間がない。
僕は出発する。
そしていつも通り日付が変わってから帰ってくる
再生紙は無くなっている
CCDの画像なんていくらでも加工が出来る
やつらは言うだろう
でも僕の頭の中には記録している
トレント・レズナーが囁く
俺たちは遠くに来すぎたんじゃないか
this is the beginning of the end
空、半分、5/18、8:10。間違いない。
朝目覚めると微妙な違和感を感じる。
毎日のことで違和感そのものに違和感がなくなっている。
ループする思考のままカーテンを開け
朝食の用意に取りかかる。
今日はパンの番だ。
オーブンを250℃に設定し加熱を開始する。
凍結したトーストにハムとタマネギ、
チーズ、それからピザソースをかける。
オーブンは150℃くらいになっている。
いったん作業をやめて窓の外を見る。
窓は密閉され硬度を保ち外界の音を遮断している
今日も晴れている。
視界に動きがある。
300mほど離れたビルの屋上に
上着を脱いだ白いワイシャツのスーツ姿の人たち
何人も上がってくる。
同じような格好をした同じような人たち
何かの運動を始める
それは僕には全く同じ人に見える
わざとランダムに動きのタイミングをずらしているけれど
実はそれはプログラミングされているだけで
同じ人なのだ
いくつかのビルの屋上が見える
室外機、避雷針、フェンス、そして屋上への扉
奇妙に時間が静止してから
いくつかのビルの屋上の扉から
上着を脱いだ白いワイシャツのスーツ姿の人たちが
何人も上がってくる。
ランダムに動く何者かの動きが
視界のそこここで見られる
僕は窓から離れてオーブンからトーストを取り出す
少し外に気を取られすぎた。サラダがまだ出来ていない。
テレビではエージェントスミスが
Everything that has a beginning has an endとつぶやいたところだ
ネオ、君なら出来る、と僕は思う。
アスパラガスを少なめの水でゆでてからふと
音楽をかけていないことに気づく。
アンプのスイッチを入れ昨日の夜入れたままのCDを再生する。
テレビの音は消えてすぐにトレント・レズナーが
ささやき出す。
this is the beginning
やつらはおまえのマインドを読む
俺たちはもうだいぶ高くまで登ってきた